2010年3月12日 (金)

JR三輪駅のまん前の観光インフォメーション兼カフェ「軽茶テラス三輪座」

JR三輪駅の改札を出ると、目の前に緑地に「三輪座」と染め抜いた日除け暖簾と、お酒造りの象徴である杉玉が目に飛び込んできます。その奥にあるのが吉野杉の厚板の床に吉野桧のちゃぶ台という、木の温もりにこだわったお座敷型カフェ「軽茶テラス三輪座」。最近は、テレビ局や新聞社が、ある噂を聞きつけて取材によく訪れるといいます。そのお目当てとは何なのでしょう?

三輪座店 カフェテーブル
木製仮面クッキー トシコちゃん

マスコミにモテモテの「木製仮面クッキー」

「ここでコーヒーを頼むと不思議なクッキーが付いてくると聞いたんですけど」と飛び込んできたのは、関東方面のテレビ局の旅番組スタッフ。別の日には5大紙の記者さんも同じように訪ねてきて、「埋蔵文化財センターで不思議なクッキーがあると聞いてきたんだけど、撮影したいのでとクッキーをもって帰らはりました。」とスタッフのトシコさん。

この「木製仮面クッキー」の考案者こそ、このトシコさんなのです。彼女は自宅で、クッキー用の型をラジオペンチで加工して仮面を研究したといいます。鼻は高く、目や口は穴が開いて纏向遺跡から出土した木製の仮面とそっくり。最近はすぐ近くで卑弥呼の宮殿であった可能性が高い大型建物跡も出土したこともあって、このオリジナルクッキーがますます大もてのようです。

一芸の持ち主揃いの三輪座スタッフ

このトシコさんをはじめ三輪座のスタッフはまちおこし、まちづくりにかけては情熱的な多士済々が集まっていることで知られます。その反面カフェの運営でいえば素人ばかりの様子なのですが大丈夫なのでしょうか、という疑問をママさん役のまゆさんにぶつけてみました。

「三輪をいつ来ても楽しめる面白いまちにする、というコンセプトのもと、一芸の持ち主揃いのスタッフたちが自然に集まっている」といいます。「むりにカフェらしさを追求するのでなく、それぞれの一芸をのびのび発揮してくれればちょっとその辺にはない、まちづくりの核となるカフェに化ける可能性もあるのです。」と、まゆさん。

まゆさん ウェルカムボード
手づくり食器棚

まちづくりのもう一つの拠点と連動して

まゆさんが上げてくれた一芸の持ち主で、例えば「新人スタッフで英会話が得手のやまちゃん、何しろアメリカの高校を出ているんです。グローバルな接客対応はもちろん、スタッフが英会話サロンをひらくなんてことになればすてきでしょ」

「実は、まちづくりのもう一つの拠点として、三輪の町家を改装したギャラリー『三輪中町ギャラリー醸(かもす)』がまもなくオープンします。そちらではいろいろな教室を開けるスペースもあるので、英語でおしゃべりできる日なんてのがあるコンテンツも夢物語ではありません。」

二つの拠点が連動すれば面白い運用が可能だといいます。「ギャラリーでグループ展などを開催していただくと、グループのご家族など周辺の方々の来訪も期待できます。当然食事や寛ぎスペースとしてのカフェのニーズも生まれるはずです。関連施設として連携して、お客様に楽しんでいただくアイデアは無尽蔵。」

桜井にはまちおこしの物産を置いたり、2階で教室を開いたりできる喫茶店の先例もあります(桜井駅前のマジックマレットさん)。スタッフの一人こまっちゃんはそこに勤めていた経験もあるし、まゆさんはそこでフラワーアレンジメントの教室を開いていたなんてご縁もあったりするのです。なるほど、まちづくりカフェとして化ける期待は大きいかも。

「多士済々のスタッフが、これをやろうよというプロジェクトをつぎつぎに立ち上げていってくれさえすれば、そういういい雰囲気のPRは、スタッフに陽さん・ひろさんというコピーライターが夫妻で参加してくれているのも強味です。目下ギャラリー醸のオープニングイベントの企画から営業用のホームページ作りまで、裏方でばっちり頑張ってくれていますよ」とのこと。

こまっちゃんとやまちゃん、ハイチーズ! やまちゃん こまっちゃん
ひろさん 陽さん

リピーターの多い来訪者をますますとりこにする仕掛けを

それにしても最近は三輪の大神神社がパワースポットとしてテレビでも俄然脚光を浴びていますね。「三輪の来訪客はリピーターが多いといわれます。それは大神神社への朔日(おついたち)参りの習慣(1日に限らないけど)をもつ方々が多いからだと思います。テレビで話題になったりするとますます三輪に愛着を感じていただいてたりしているのじゃないでしょうか」と語るのは、冒頭のトシコちゃんのダンナさんでNPO三輪座の理事長カワバタさん。

JR三輪駅は大神神社の玄関口であるとともに、最近話題連発の纏向遺跡も本来お隣の巻向駅が玄関はずが、近辺の観光インフォメーションとなると三輪駅前の三輪座しかありません。卑弥呼の時代に関心のある考古学ファンも加わって、全国各地からの来訪客が増えているそうです。

そんなお客様を迎える三輪座の軒先に「杉玉」が吊るしてあるのは、なぜ?こんな質問にもお酒は一滴も呑めないカワバタさんが答えてくれます。「三輪の大神神社はお酒の神様なのですよ。毎年暮れごろに新酒ができたとき全国の酒蔵で緑の新しい杉玉に衣替えしますが、あれは大神神社から授与され新酒ができたしるしになります。」

店頭の杉玉 カワバタさん ギャラリー醸

「杉玉は一年軒先に吊るしておくと、だんだん茶色になります。それはお酒の熟成を表すしるしでもあるんですよね。その杉玉のふるさとでのまちづくりでも年々新しい賑わいを醸していきたいという願いを込めて、三輪座でも昨年の暮れから緑の杉玉を吊るしています。」あ、それで、ギャラリーも「醸(かもす)」なんですね。よくわかりました。

軽茶テラス三輪座 JR三輪駅のまん前で営業中!
軽茶テラス 三輪座

JR三輪駅前の観光インフォメーションを兼ねた、お寛ぎ喫茶コーナーが「軽茶テラス『三輪座』」。店頭のテラス部分では「桜井市の物産・オリジナル工芸品」、「地元の安心野菜」も販売。カフェのお冷やコーヒー・紅茶には三輪山の湧き水を使用。

コーヒー(ホット・アイス)¥400
紅茶(ホット・アイス/レモン・ミルク・シナモンリーフ)¥400
ジュース(リンゴ)¥350
抹茶(和菓子付)¥600
としこのきまぐれケーキ¥300~¥450
(コーヒー・紅茶とケーキのセット¥50引き)

所在地:〒633-0001 奈良県桜井市三輪354
TEL:0744-49-3818
営業時間:10:00~17:00
定休日:水曜日・ただし、朔日(おついたち)と祝日にあたる時は営業。(その場合は翌日店休)
軽茶テラス三輪座スタッフブログ 

文・写真:弓手洋一郎・ひろみ   

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2009年10月29日 (木)

地元の旬野菜の元気をもらいながら、ほっこりとランチできる「ふるさとの食・奥明日香 さらら」

ふるさとの食・奥明日香 さららは、明日香村から吉野へ至る芋峠の手前、明日香村の奥座敷のような栢森大字(かやのもりだいじ)で、民家を改装して平成20年4月に開業したランチと喫茶のお店です。ある秋の日の午後、経営者の坂本博子さんを訪ね、開店から約一年半の手応えをうかがってみました。

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栢森へは、石舞台から案山子ロードで有名になった稲渕を通って飛鳥川上流域沿いの道を南下します。集落の入り口は栢森バス停があり道も開けているのですぐわかります。さららは集落入り口から100mくらい入った左手すぐ。でも絵を描く人ならずとも思わず足を止め、デジカメでスケッチしてしまうくらい、絵心を揺すぶるひなびた集落の景色に心が和みます。

さららの周りの畑を見ると収穫中の旬の野菜が植わっているし、塀越しに果物がたわわに生っていて、景観そのものが「ようこそ」と出迎えてくれているような不思議な気分です。メニューはもちろん、地元で採れる旬の野菜たちが主役の「さらら膳」がメイン。といってもかしこまって食べる会席のイメージでは全然なく、里帰りした田舎家で、のんびりお友達と食事タイムを楽しめる!そんな骨休めの時間が売りのお店といえるでしょうか。 

旬素材で飽きさせないさらら膳

交通の便が決してよいとはいえないお店にしては、たくさんのお客様を迎えます。先日行なわれたミニコミ紙主催のさらら塾(〝万葉の摘み菜講座〟とお食事の会)では30人の定員が3日で一杯になったのは驚きです。実施当日、さらら周辺の摘み菜ウオッチングもあって、初対面同士でも和気あいあいの雰囲気でした。

お目当てのランチメニューは今のところ「さらら膳」のみ。飽きないよう季節の食材により内容を入れ替え「ブログ・Diary(さらら日記)」で案内しています。外せない構成としては、古代米ご飯、手作りこんにゃくはぴり辛になったりサラダになったり、てんぷらはそのときどきの野菜たち。この他大根餅など珍しい料理等々十数種、来て食べてのお楽しみといったところ。

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意外に近かった日本のふるさと

「さらら膳」は、食材を大切にしたいという思いから当日朝までの予約制となっていますが、知らずに突然来られるお客様もたまにあるようです。それも遠路わざわざという方が多いので、席が空いていれば、完全なさらら膳をご用意する材料の余裕がない場合でも、ご飯と香の物、汁物程度はお出ししているとか。

そんな経緯の不意のお客様も、前述のさらら塾を機会に初めて訪れたお客様も、長閑な日本のふるさとって意外と近くにあるのね!と感じられたり、ふるさとの食ってこんなだったんだ!と、リピーターになり、周囲の方にも口コミしてくださったりの好循環があって、さららのお客樣の輪はじわりじわり広がっているようです。

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若い世代にも昔食のファンが

当初顧客層のメインは坂本さんと同世代の50歳代かなと想像していたそうです。ところがミニコミ紙をはじめ、「SAVVY」など若い世代向け雑誌や旅の情報誌にどんどん取り上げられたた結果、今では奥明日香の食と景観に魅せられた30歳代(子連れも多い)~40歳代の来店が多いお店になっているといいます。

ずっと以前、地元の人の多くは、こんな田舎のどこがいいの?都会から人を呼ぶなんて夢物語では?と思っていたことでしょう。でも今は違います。奥明日香には、季節の移ろいの美しさ、「旬」に恵まれたすばらしい食があることを再発見し、昔からある食文化の大切さを顧客とコミュニケーションできるスタッフたちに支えられているのが、さららの強味です。

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さららのルーツは地域の活性化を担う女性グループ

前身として「奥明日香に人を呼ぼう!」と平成14年に結成された女性グループ「さらら」の活動の積み重ねがありました。その活動は農山村に伝わるこんにゃくや漬物などの素朴な加工品作りの再興からでした。それが発展してそれぞれの家庭で姑から嫁へと受け継がれてきた伝統的な手料理の集約ともいえる「さらら膳」が生まれたのでした。

始めは、地元の神社の社務所で年数回「さらら膳」のお食事会を企画していました。これが好評を博したことから、次は田舎の自然や、食の豊かさに誇りをもって毎日発信していくために、借り物ではない自分たちの拠点をもつ夢が育まれました。そしてとうとう、坂本さんのリーダーシップと度胸で民家を買い取り、「ふるさとの食 奥明日香 さらら」の開業にこぎつけたのです。

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さらら姫も見た風景が今も

因みに「さらら」のネーミングは、このあたりが1300年以上昔、天武天皇の皇后鵜野讃良皇女(うののさららのひめみこ:後の持統天皇)が吉野へ足しげく通われた道沿いにあたることから「さらら姫」にあやかったものです。坂本さんはさらら姫が歩いたという伝承のある古道にも関心を持っていて、暇を見つけては同好のメンバーで歩いているといいます。

1300年以上前にも通じる長閑な日本の田舎の景観が今も色濃く残っている。谷川沿いや山道に一歩足を踏み入れると、自然からのプレゼントである食材もいっぱい。それを活かした昔からある田舎の食事を都会の人が喜んでくれる。そんな地域資源を大切に思う心を燃やし続ける女性集団の舵取り役坂本さんの、竹を割ったような性格そのものの話し振りが谷川の水のように爽やかに感じられました。

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奥明日香活性化グループがルーツの喫茶・お食事の店
料理:さらら膳2,000円(デザート付)
ドリンク:珈琲・紅茶400円
手作りジュース:くろまめ/うめ/しそなど400円
手作りケーキ:生姜シフォン/バナナシフォンなど
所在地:〒634-0124 奈良県高市郡明日香村栢森137
アクセス:詳細はホームページ参照 
TEL:0744-54-5005
営業時間:11:00~16:00
営業日:毎週 木・金・土・日。喫茶以外は要予約。予約は電話(留守番電話でも)で。
■夏季休業 8月1日~20日
■冬季休業 12月21日~1月20日

文・写真:弓手洋一郎・ひろみ   

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2009年8月14日 (金)

緑に染まりそうな木漏れ日の庭で!喫茶・お食事「山の辺の道 花もり」

大神神社から桧原神社方面に10分ほど歩いた山の辺の道の緑の真っ只中に、フレッシュなご夫婦、河向(かわむかい)直樹さん、絹子さんが営む喫茶とお食事の店「山の辺の道 花もり」があります。夏のある朝、二人のお店を訪ねました。日差しがきつくなり始めていましたが、庭には涼しげな風が吹き抜けていきます。

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庭の、ゆったりとした六角テーブルに木漏れ日が注いでいます。何も語らなくても道を行くウオーカーの琴線にふれる情景といえるでしょう。モクレン・桜・花水木・紫陽花・紅葉・南天と季節の移ろいを愛でながら庭でお茶したり、お食事できるのがお店の売り。夫婦交代でつづる花もりブログでは、庭周辺の彩りや、旬のお料理の情報を感性豊かな写真と文で発信しています。

一歩庭に入ると、そこはアートな心が行き届いたおしゃれな空間です。つくばいには清水が貯えられ色とりどりのビー玉や小さな錦鯉の飾り物が水底で揺らめきます。トイレの外壁さえもそれと感じさせない手作りアートがさりげなく掲げられています。これらはお節料理の飾り物ともども、陶芸を学んできた絹子さんの手でかもし出されるお店のディテールといえるようです。

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相席が気にならない六角テーブルが三つ

河向ご夫婦がお店を始めて5年目に入っています。今年5月22日の花もりブログに「庭のテーブルの色が褪せてきたのは店を始めて時間が経った証だ。」と記されていたのがとても印象に残っていました。

聞けば、開店前にインターネットで、丈夫で相席が気にならないようなタイプのテーブルを探したそうです。木の材質は鉄道の枕木に使われる木で、別名鉄の木といわれるだけあって、組み立てるときインパクトドライバーのビットが何本も折れたといいます。年を経るほどに山の辺の道にぴったりのいい感じの風合いがでています。

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季節の彩りがハーモニーを奏でる庭でお茶とお食事

狙い通り、込み合ってくると一つのテーブルで6人のお客様が自然と相席になり、そこは互いに山の辺の道ウオーカー、「どちらから?」にはじまり、初対面でもお客様どうし話の花が咲くことも多いとか。それに、相席のもう一つの効用が。人の食べているメニューが美味しそうに見えてしまうのですよね。ついデザートを追加注文してしまうお客様も。

もちろん、食事やドリンク、デザートメニューの旬と地場産へのこだわりが半端じゃないのが花もりの嬉しいところ。今、旬のデザートといえば「南高梅のシャーベット」。奈良産の南高梅を使い、とても手間のかかる梅蜜煮を作るところから写真に撮り、ブログで発信されています。それはそれは気の遠くなるような手間のかけようです。

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新鮮な旬を味わってもらうために欠かせないひと手間

「食べれば一口のものに、なぜそこまで手間をかけるの?」この問いへの答えはじつに簡潔です。たとえ一口でも、自然のものを美味しく食べていただくために「そのひと手間をかける、かけないで全然違うから。それを知っていて手抜きはできないじゃないですか」ときっぱり。

山の辺の道という“非日常”の世界を味わいにきておられるお客様に、「美味しかった!また来たいな」というもう一つの楽しい思い出を加えてもち帰ってほしい。お客様とのそんな絆を大切につむぎ続けている河向夫妻。このブログからもお二人の清々しい息吹が伝われば嬉しいなと思います。

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河向直樹さんと絹子さんご夫婦が営む喫茶・お食事の店
ドリンク:珈琲・紅茶・ゆず茶他450円
料理:季節弁当2,000円、野菜膳1,050円、そうめん・そば(天ぷら付)800円
デザート:奈良産南高梅のシャーベット500円、濃茶わらび600円他
所在地:〒633-0073 奈良県桜井市大字茅原222-4
アクセス:JR桜井線三輪駅 徒歩15分 
TEL/FAX:0744-46-4260
営業時間:10:00~17:30(L.O.17:00) 
定休日:月曜日 

文・写真:弓手洋一郎・ひろみ

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2009年7月 5日 (日)

山の辺の道の隠れ家、田舎家の喫茶「卑弥呼庵」

山の辺の道で、ほっこりとお茶するならここ、と情報誌によく紹介されている、田舎家の自宅をそのまま使った喫茶「卑弥呼庵」をお訪ねしました。何といっても名前のインパクトが強烈なのでネーミングの背景などもじっくり聞いてみたかったのです。

山の辺の道から少し路地を入ったところにあるお店は、山の辺の道のオトナの隠れ家といったところ。奈良公園のお茶席などでも見かける野点傘が目印となってお店の入り口である門に誘います。門脇にはお店のママさん伊勢子さん丹精のお花が日々欠かさず活けられています。

山の辺の道を行く人を誘導する野点傘 門脇のウエルカムのお花 玄関脇のお花

そして門を一歩入ると、そこは伊勢子さんギャラリー

蔓編み細工と地域のボランティア活動で生まれた花炭のコラボ作品をはじめ圧倒的なボリュームで目を楽しませてくれます。

ふくろうの蔓細工 蔓かごと華炭
松ぼっくり 栗と唐辛子

昔から日本の田舎にあるありふれた自然と、お茶お華といった伝統文化が大好きという伊勢子さん。一人で近くの山を散策して蔓を集め、蔓編みに没頭するのは至福のひと時とか。お茶お花の両刀使いの伊勢子さんの手にかかると茶花の花器にもなる蔓細工はとても洒脱。えもいわれない味わいに、飽くことなくシャッターを押し続けたのでした。
伊勢子さんはもともと現在お店となっている自宅で、お花の教室を開いていて、茶花を活けた離れの座敷で生徒さんにお茶の接待も度々催していました。その延長でご主人である政幸さんの定年を機会に自宅で「卑弥呼庵」を始めたそうです。

ふる里の温もりをたたえる和風コーヒーが人気

名物の「和風コーヒー」は政幸さんのオリジナルで「妻のお茶を真似してイタズラ心で抹茶茶碗を使ってコーヒーを淹れフレッシュで泡立ててみたらまろやかな味になった」のが始まり。たっぷりとボリュームがあるので、縁側の柱にでももたれて、三輪山や景行天皇陵を望む長閑な山の辺の道を眺めながらまったりといただくのがお似合い。そのまま半日ぐらい読書をしても気を使わなくても済む――まったくの田舎の親戚感覚でお客様をお迎えするのが卑弥呼庵のコンセプトといえるようです。

読書をしたり放っておいてほしそうなお客様は干渉せず、おしゃべりしたいお客様にはとことん付き合うという接客スタンスがそれを裏付けています。「はじめにほんのちょっと声を掛けるだけでどちらのタイプのお客様か分かる」といいます。年一度くらいの周期で訪れる人が多く、いつの間にか親戚付き合いのように親密になっているお客様が全国に広がっているとか。

茶筅で泡立てた和風コーヒー 座敷からの三輪山や景行天皇陵の眺めは長閑そう

友人の声に応えて自宅で開業

定年後は別の場所でお店を始める計画もあったが、自宅でお店を始めたのはやはりきっかけがありました。それは、山の辺の道が好きでいつも歩きに来る友人の声でした。「このあたりには休憩できるお店はおろか、お弁当を広げられる木陰も少ない」「この家が茶店だったら他のハイカーもきっと喜ぶよ」と。なるほど、縁側からの借景にはお金もかからないことでもあり、思いがけなく自宅でお店が誕生することになったのでした。

卑弥呼庵というネーミングは店を始めるとき、ちょうど黒塚古墳の33面の三角縁神獣鏡が発掘され、卑弥呼の鏡ということで全国的に話題になったのにあやかったとのこと。決して歴史に詳しいわけではないので、学者さんなどに話しかけられたときは、「もともと建築分野で役所にいた人間なのでどちらかといえば歴史の壊し屋さんだったかも」とざっくばらんに先手を打つと政幸さん。
私たちも卑弥呼との関連に関心があっただけに、「そうなんだ」と思いましたが、この辺りのへんぴ度、この家の古色蒼然度に惚れてお嫁に来たという伊勢子さんのミステリアスな魅力が卑弥呼役そのものなのだという気がしたのでした。

伊勢子さん 政幸さん リラックスするお客様   
お座敷にも花炭 

ストレスを溜めない秘訣

開業以来11年、前述のように表玄関を飾るお花は伊勢子さんの担当。「主人一人が見る花より大勢の人に見てもらうほうが張り合いがあるもん。それに要所を押さえておくと他で手抜きをしても目立たないのよね」自宅にお客様を迎えてもストレスを溜めない秘訣は、こんな〝ハンドルの遊び〟にあるのかなと思えました。お話を聞いた私たちもまた、たまに帰って来たい親戚のような本当にほっこりした気持ちになってお暇することができました。

卑弥呼庵 卑弥呼庵
山の辺の道・柳本で山東政幸さん伊勢子さんご夫妻が営む和風民家の自宅をそのまま使った喫茶店。政幸さんが定年退職した平成10年に開業。メニューは「抹茶(和菓子つき600円)」と茶筅で泡立てた「和風コーヒー(400円)」だけだが、話し好きなご夫婦とのおしゃべりやのんびりと長閑な風景に浸りに日本全国から訪れるファンが絶えない。

所在地:天理市柳本町2994(R169渋谷バス停より東へ徒歩8分)
電話:0743-66-0562
営業時間:9:00AM~17:00PM

文・写真:弓手洋一郎・ひろみ

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