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2009年7月

2009年7月 5日 (日)

山の辺の道の隠れ家、田舎家の喫茶「卑弥呼庵」

山の辺の道で、ほっこりとお茶するならここ、と情報誌によく紹介されている、田舎家の自宅をそのまま使った喫茶「卑弥呼庵」をお訪ねしました。何といっても名前のインパクトが強烈なのでネーミングの背景などもじっくり聞いてみたかったのです。

山の辺の道から少し路地を入ったところにあるお店は、山の辺の道のオトナの隠れ家といったところ。奈良公園のお茶席などでも見かける野点傘が目印となってお店の入り口である門に誘います。門脇にはお店のママさん伊勢子さん丹精のお花が日々欠かさず活けられています。

山の辺の道を行く人を誘導する野点傘 門脇のウエルカムのお花 玄関脇のお花

そして門を一歩入ると、そこは伊勢子さんギャラリー

蔓編み細工と地域のボランティア活動で生まれた花炭のコラボ作品をはじめ圧倒的なボリュームで目を楽しませてくれます。

ふくろうの蔓細工 蔓かごと華炭
松ぼっくり 栗と唐辛子

昔から日本の田舎にあるありふれた自然と、お茶お華といった伝統文化が大好きという伊勢子さん。一人で近くの山を散策して蔓を集め、蔓編みに没頭するのは至福のひと時とか。お茶お花の両刀使いの伊勢子さんの手にかかると茶花の花器にもなる蔓細工はとても洒脱。えもいわれない味わいに、飽くことなくシャッターを押し続けたのでした。
伊勢子さんはもともと現在お店となっている自宅で、お花の教室を開いていて、茶花を活けた離れの座敷で生徒さんにお茶の接待も度々催していました。その延長でご主人である政幸さんの定年を機会に自宅で「卑弥呼庵」を始めたそうです。

ふる里の温もりをたたえる和風コーヒーが人気

名物の「和風コーヒー」は政幸さんのオリジナルで「妻のお茶を真似してイタズラ心で抹茶茶碗を使ってコーヒーを淹れフレッシュで泡立ててみたらまろやかな味になった」のが始まり。たっぷりとボリュームがあるので、縁側の柱にでももたれて、三輪山や景行天皇陵を望む長閑な山の辺の道を眺めながらまったりといただくのがお似合い。そのまま半日ぐらい読書をしても気を使わなくても済む――まったくの田舎の親戚感覚でお客様をお迎えするのが卑弥呼庵のコンセプトといえるようです。

読書をしたり放っておいてほしそうなお客様は干渉せず、おしゃべりしたいお客様にはとことん付き合うという接客スタンスがそれを裏付けています。「はじめにほんのちょっと声を掛けるだけでどちらのタイプのお客様か分かる」といいます。年一度くらいの周期で訪れる人が多く、いつの間にか親戚付き合いのように親密になっているお客様が全国に広がっているとか。

茶筅で泡立てた和風コーヒー 座敷からの三輪山や景行天皇陵の眺めは長閑そう

友人の声に応えて自宅で開業

定年後は別の場所でお店を始める計画もあったが、自宅でお店を始めたのはやはりきっかけがありました。それは、山の辺の道が好きでいつも歩きに来る友人の声でした。「このあたりには休憩できるお店はおろか、お弁当を広げられる木陰も少ない」「この家が茶店だったら他のハイカーもきっと喜ぶよ」と。なるほど、縁側からの借景にはお金もかからないことでもあり、思いがけなく自宅でお店が誕生することになったのでした。

卑弥呼庵というネーミングは店を始めるとき、ちょうど黒塚古墳の33面の三角縁神獣鏡が発掘され、卑弥呼の鏡ということで全国的に話題になったのにあやかったとのこと。決して歴史に詳しいわけではないので、学者さんなどに話しかけられたときは、「もともと建築分野で役所にいた人間なのでどちらかといえば歴史の壊し屋さんだったかも」とざっくばらんに先手を打つと政幸さん。
私たちも卑弥呼との関連に関心があっただけに、「そうなんだ」と思いましたが、この辺りのへんぴ度、この家の古色蒼然度に惚れてお嫁に来たという伊勢子さんのミステリアスな魅力が卑弥呼役そのものなのだという気がしたのでした。

伊勢子さん 政幸さん リラックスするお客様   
お座敷にも花炭 

ストレスを溜めない秘訣

開業以来11年、前述のように表玄関を飾るお花は伊勢子さんの担当。「主人一人が見る花より大勢の人に見てもらうほうが張り合いがあるもん。それに要所を押さえておくと他で手抜きをしても目立たないのよね」自宅にお客様を迎えてもストレスを溜めない秘訣は、こんな〝ハンドルの遊び〟にあるのかなと思えました。お話を聞いた私たちもまた、たまに帰って来たい親戚のような本当にほっこりした気持ちになってお暇することができました。

卑弥呼庵 卑弥呼庵
山の辺の道・柳本で山東政幸さん伊勢子さんご夫妻が営む和風民家の自宅をそのまま使った喫茶店。政幸さんが定年退職した平成10年に開業。メニューは「抹茶(和菓子つき600円)」と茶筅で泡立てた「和風コーヒー(400円)」だけだが、話し好きなご夫婦とのおしゃべりやのんびりと長閑な風景に浸りに日本全国から訪れるファンが絶えない。

所在地:天理市柳本町2994(R169渋谷バス停より東へ徒歩8分)
電話:0743-66-0562
営業時間:9:00AM~17:00PM

文・写真:弓手洋一郎・ひろみ

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